曙が述懐した大関カド番の重み「小錦関との一番、あの日だけ休場したかった」
■引導を渡した曙は目を伏せた
転落が決まった瞬間は、館内に何とも言えない空気が漂う。93年九州場所、カド番の小錦は12日目に負けて5勝7敗と後がなくなった。13日目の相手は横綱昇進5場所目の曙。3連覇へ向かって1敗で優勝争いの先頭にいた。
立ち合いも突き放しも弱い小錦に対し、さっと右上手を取った曙が2度、3度がぶって難なく寄り切る。2人とも淡々としていたが、小錦は納得した顔、曙は目を伏せて土俵を下りた。
膝のけがを克服して外国人力士初の大関になり、賜杯も3回抱き、大関在位39場所の小錦に、ねぎらいの拍手が送られた。曙は後日、つらそうに語っている。
「小錦関との一番、あの日だけ休場したかった。そしてまた次の日に出られたらよかったけど」
前日までに小錦があと1勝していれば、曙が引導を渡すこともなかった。91年春場所、史上初の幕内外国人力士対戦を行った2人に、勝負の巡り合わせは非情だった。