WBCチェコ代表は大リーグ機構“世界戦略”の重要な成果 「野球の普及」の大義ようやく実を結ぶ
■国内リーグの地道な活動
こうしたことからWBCを足掛かりとした野球の普及という機構の戦略は事実上破綻。一度始めたからには容易に終えられないという、機構が自らの体面を維持するためだけに開催されているとみなされることさえ珍しくなかった。
しかしながら、初参加となった英国とチェコ、とりわけチェコの存在は、機構の戦略が名ばかりのものでなかったことを示している。
1989年のベルリンの壁の崩壊に始まる冷戦の終結を契機として野球が本格的に行われるようになったチェコは、93年にチェコ・エクストラリーガが創設されたことで普及の第一歩を踏み出した。97年には旧チェコスロバキア出身のパベル・ブディスキーがエクスポズとマイナー契約を結び、チェコ人として初めて北米プロ球界の一員となっている。
それとともに国内リーグの地道な活動を目にした若者が野球に興味を持ち、大リーグで学んだ指導者たちが体系的な指導を行うことで、WBCは現在のチェコ野球が目指すべき最大の目標となっている。今大会では消防士や教師が代表となっていることが話題ながら、日本戦では大会屈指の強打者である大谷翔平から三振を奪うなど、その実力も確実に向上している。
機構が掲げてきた「WBCは野球の普及のため」という戦略は、ようやく実を結びつつあるのである。