コアな野球ファンの情報はバカにできない…大学選手権で耳にした2人組の核心を突いた会話
他球団のスカウトならまだしも、野球ファンに話を聞くなんて、部長も焼きが回ったか。そんなふうに思って、
「いやだな、部長。いくらオレのことが信用できないからって、よりによってシロウトに話を聞くなんて……」
と、水を向けると、こう言った。
「おそらく定年を過ぎて、趣味で野球を見ている人たちだろう。彼らの雑談に聞き耳を立てていたら、普段からあの2年生の学校の試合をよく見てることが分かった。おまえは高校生もチェックしなくちゃならないし、そこまでひんぱんに足を運ぶわけにいかない。だったらヒントにすべきだろう。もちろん、実際はどうか、確かめる必要はあるが……」
■実際にタイムを計ると…
スカウトが野球好きの知り合いに頼んで席を取ってもらうケースはよくある。かく言うオレも頼むけれども、彼らに話を聞いてヒントにしたことはない。部長は普段から野球好きの情報をアテにしてるんだろうか。
「かつて打撃のいい高校生を取るべきかどうか悩んだことがある。そんなとき、たまたま目の前にいた野球好きが、その高校生は走力もハンパじゃないと、俊足の高校生を引き合いに出して彼より速いと言ってたのを耳にしたんだ。決して足が速くは見えないが、実際にストップウオッチで確かめてみると速い。走力もあるならと指名して正解だったことがある。あの2年生右腕、隠し玉にできるかもしれないし、あとでしっかりチェックしておけよ」
やれやれ、また仕事が増えたと思ったね(苦笑)。
(プロ野球覆面スカウト)