手放しでは喜べない? 尊富士の快挙「110年ぶり新入幕V」が美談仕立てになる危うさ
元横綱の若乃花氏が評論家を務めるスポーツ紙で「絶対に無理をして出ないでほしい」と言えば、八角理事長(元横綱北勝海)も「軽傷であってほしい」としながら、「無理をしては元も子もない」と懸念。そんな中で、「(出場を)止めれば後悔するし、止められた(尊富士の)後悔もある」と出場を許可した伊勢ケ浜親方はもともと、「立って歩けるうちはケガのうちに入らない」という考えだ。
過去、それでケガの連鎖となったのが横綱照ノ富士である。前回の大関時代の2015年9月場所13日目に、右膝の十字靭帯を断裂。それでも優勝がかかっていた14日目以降も強行出場し、優勝同点。綱とりがかかった翌場所もケガが癒えぬまま強行出場。これが惨事を引き起こし、右膝をかばって相撲を取り続けた照ノ富士は左膝なども痛めてしまい、結果的に序二段まで転落である。当時も「なぜ、照ノ富士を休場させないのか」という声が角界内外から出ていた。
「ケガを抱えての奮闘」はいかにも日本人好みだが、まだ大銀杏も結えない25歳の有望力士がその将来をフイにする可能性もあるとすれば、それは決して美談ではないだろう。