《今宮健太の巻》「1発かました」僕の目を臆さず睨み返した生意気根性に「大物になるかも」
「おまえらに宿題出すわ。人の顔を見て挨拶すること。下向いてばかりじゃ話にならんぞ。先輩に『おはよう』と言われる前に、自分から挨拶。おまえらも高校で言われてたやろ」
僕にこう言われると、大抵の高校生はびびってしまうもの。でも、他の2人がうつむく中、今宮だけはじっと僕の目を見ていた。案内が終わり、「どうだった?」と聞く簑原さんに僕はこう言いました。
「簑原さん、いつも『一発かましたれ』って言ってるじゃないですか。でも、今宮は僕のことを『このオヤジ、何言ってんだ』くらいの目で見てましたよ。大物になるかもしれませんね」
入団する前から、それだけ気持ちの強い性格だったんです。
ある年のシーズン終盤にふくらはぎを負傷した時も、何とかCSに間に合わせようと奮闘。僕が「気持ちはわかるけど、無理をしたらさらにケガするぞ」と心配すると、今宮は平然とこう答えました。
「僕の立場は安泰じゃないんで。今はレギュラーでバリバリやっていても、その座を誰かに取られるかもしれませんから」
これには思わず僕も「健太、おまえは俺らの時代の選手みたいやな」と驚いたくらいです。
素質も凄いが、それ以上に努力と根性の男。ホークスの打撃職人、中村晃にもそんな一面がありました。(つづく)