島田裕巳(宗教学者・文筆家)

公開日: 更新日:

2月×日 著者から贈られた橋爪大三郎「アメリカの教会」(光文社 1210円)を読んだ。新書なのに476ページもある。アメリカの教会の歴史を扱ったもので、大勢の学者が執筆にたずさわった「アメリカの宗教百科事典」を種本にしている。著者も述べているが、歴史の教科書のような本だ。これも著者が言うように、こうした本はこれまでなかった。私も読んで、随分と勉強になった。アメリカにはキリスト教のたくさんの宗派があり、それが抗争をくり返してきた。まるで日本の戦国時代のようでもある。

 橋爪さんと言えば、構造主義や言語ゲームの本を通してよく知られるようになり、理論社会学の分野で活躍してきた。ところが、ここのところは実証的な方向に変わってきて、アメリカや中国のキリスト教会を数多く訪れ、その実情にかなり詳しい。夫人の影響も大きいようだが、学者も、年齢とともに方向性が変わるようだ。

2月×日 飯田橋で開かれている若者たちとの勉強会に臨んだ。この勉強会はすでに2年にも及んでいるが、最近、その成果がまとまった。メンバーが分担執筆した「若者のための死の教科書」(青文舎 1650円)だ。私が一応監修者になっているが、表には出ていない。これも考えてみれば、「アメリカの教会」とは性格が違うものの、教科書だ。

 アマゾンを通してしか販売されていないのだが、メンバーは20代が中心で、皆ユニークだ。すでに大成功した企業家、立て続けに個展を開いている注目株の画家兼僧侶、単独の著作がベストセラーになったモラハラの研究者、変わった葬祭事業に乗り出した元漁師の大学生。今、この勉強会では神殿造りに取り組んでいるが、これもだんだん本当に出来そうな勢いになっている。若いというのはいいことだと改めて思っている。こちらも頑張らねばと執筆に励んでいるのだが、今年に入ってすでに3冊刊行した。今度は創価学会についての対談本がでる予定だ。

【連載】週間読書日記

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2

    阪神「老将の孤立無援化」の懸念…岡田監督に“勇退説”でコーチや選手もソッポの可能性

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    「24時間テレビ」に“旧ジャニーズ不要論”噴出…20年以上続いたメイン司会途絶えて視聴率回復の皮肉

  5. 5

    大谷が2026年WBCを辞退する可能性…二刀流継続へ「右肘3度目手術」は絶対避けたい深刻事情

  1. 6

    巨人ドラフト戦略に異変…浅野翔吾が覚醒気配で1位は《右の大砲》から《鳥谷2世》に乗り換え

  2. 7

    「麻生派でも裏金作り」毎日新聞スクープの衝撃!党政治刷新本部座長の派閥議員は国会で虚偽答弁か

  3. 8

    松田聖子と神田正輝の心中は? 神田沙也加さん元恋人・前山剛久の俳優復帰宣言に浴びせられる非難

  4. 9

    自民党総裁選で蠢動する“生臭い”顔ぶれ…甘利、萩生田、菅が「復権作戦」を醜悪展開

  5. 10

    もはや「苦行」、「回数ごまかせる」の指摘も…24時間テレビ「やす子マラソン」強行に視聴者ドン引き