「微笑む慶喜」戸張裕子著、河合重子監修
慶喜にはそうした折の元将軍、公爵としての威厳に満ちた公での顔の他に、人前では見せない優しい顔の2つの顔を持っていたという。明治39年、日露戦争凱旋祝賀会の折に撮られたスナップには、その片鱗(へんりん)がうかがえる好々爺(こうこうや)然とした慶喜の姿が写っている。
その他、子息の結婚記念写真や、孫の喜久子(のちの高松宮妃殿下)を抱いている姿など、プライベートな写真も網羅。
家令が残した「家扶日記」など多くの史料をひもときながら、慶喜の行動を追いかけ、その心情に迫るとともに、写真にともに写る明治華族の知られざる側面を明らかにしていく労作。
(草思社 1900円)