GWだ!さぁ呑むぞというアナタに「おもしろ酒本」特集
「愉しい日本酒学入門」新潟大学日本酒学センター編著
今日からGWも後半に突入。混雑を避け、自宅でゆっくり「家呑み」を楽しむ人もいることだろう。そこで、今回はそんな酒にまつわる本を紹介。教養としての日本酒学や江戸っ子が楽しんだ酒とつまみ、脳と酒の不思議な関係、そして酔いもさめるアルコール依存症の話まで。ではカンパイ!
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「愉しい日本酒学入門」新潟大学日本酒学センター編著
2024年、その「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録された日本酒。日本酒は単なるアルコールではなく、食、歴史、文化などと密接に結びついた奥深い飲み物でもある。そんな日本酒を7つの視点から解説するのが本書だ。
「日本酒の官能学」の項では、利き酒の際に使われる「香味に関する品質評価用語」を紹介。日本酒を構成する香味特性を表す用語は86あるが、一般的には「リンゴ」「バナナ」「アルコール・スパイス」「木・草・緑」など8つの香りに分類されている。たとえば吟醸酒の吟醸香は何かといえば、バナナや熟れたリンゴなどに由来する香りだそうだ。
ほかにも「古典には酒はほとんど登場しない」「節度ある飲酒量は存在しない」など、新潟大学が開講した「日本酒学」講義から豊富なエピソードと共に「お酒ばなし」が満載。
(河出書房新社 1760円)
「だから、お酒をやめました。」根岸康雄著
「だから、お酒をやめました。」根岸康雄著
学生の頃から酒をよく飲んでいた誠は、警察官になってからも飲酒癖が抜けず、それが原因で女性問題を起こし、33歳のときに離婚。工場勤務に再就職するが、生活費と養育費を除いた残りの金はすべて酒代に消えていた。
次第にアルコールが切れると手が震えるようになり、52歳のとき依願退職。やがて入院先の断酒会で知り合った涼子と結婚した。ところが誠は飲酒を繰り返し、耐えかねた涼子は家を出た。それが転機となり、以来6年間、誠の断酒は続いている。
「依存症の99%は、家族は自分を見捨てないと思っている。でもカミさんはそうじゃないと分かったんです」と語る。
「断酒会で出会った人を裏切りたくない」「あんたなんか母親じゃないと娘に言われた」など、五人五様の飲酒と断酒までの日々を赤裸々につづる。
(光文社 990円)
「江戸呑み」江戸呑み連中・文 飯野亮一・解説 海原大・料理 久住昌之・案内
「江戸呑み」江戸呑み連中・文 飯野亮一・解説 海原大・料理 久住昌之・案内
江戸っ子たちが酒の肴にしていた料理を現代によみがえらせ、食文化史研究家の解説と共に追体験を楽しむ紙上ルポ。
江戸の町にはてんびん棒を担いで食べ物を売り歩く「振り売り」がいて、枝豆は夏の酒菜の代表格だった。そして涼しくなると、おでんと燗酒が売られたという。具材はこんにゃくや里芋で、麹の量を多くした甘い味噌を塗った。また当時の居酒屋では看板にも書かれたように「すいもの」が定番メニュー。このすいものとは、酒と飲む汁物で「吸い物」と呼ぶ。ちなみにご飯と合わせるものは「汁」。
また江戸っ子の呑みの締めといえば茶漬け屋。ご飯に出汁をかけた「汁かけ飯」に叩いて割った胡椒をパラリ。超絶ウマそうだ。豊富な図版と共に江戸の食文化とエピソード、再現レシピも掲載。
(プレジデント社 2200円)
「なぜ酔っ払うと酒がうまいのか」葉石かおり著 浅部伸一監修
「なぜ酔っ払うと酒がうまいのか」葉石かおり著 浅部伸一監修
かつて「酒は百薬の長」と言われ、「ほどほどに飲む方が健康に良い」とされてきた。しかし、2018年、英国の権威ある医学雑誌において「酒は少量でもリスクがある」と発表されたのだ。しかし、酒が毒というのなら、なぜ「うまい」と感じるのか?
そんな酒にまつわる疑問を医学博士ら22人の専門家に取材、まとめた一冊。
人はストレスを感じると体は苦みを欲するため、たとえば「レモンサワー」をことさらおいしく感じるという。空腹だと甘いもの(糖分)を欲するので、カクテルが飲みたくなるという科学的分析があるそうだ。
またアルコールはやすやすと脳に到達し、快楽をつかさどる脳内ホルモン、ドーパミンが分泌され、脳波はリラックスしたときのアルファ波になる。適度な酔いは脳にとっても心地よい状態なのだ。飲酒と歯周病、内視鏡検査前に伝える一言など酒のツマミになる話が満載。
(日経BPマーケティング 1760円)