「おしょりん」藤岡陽子著
明治33(1900)年4月、麻生津村の庄屋・五左衛門が経営する羽二重工場は、火事で取引先の機織り業者を失い倒産してしまう。工場は五左衛門が、弟の幸八の助言を受け、村に産業を興すために2年前に建設したばかりだった。4年後、大阪に出稼ぎに出ていた幸八が、今度は眼鏡の枠づくりを持ち掛けてくるが、五左衛門は聞く耳を持たない。村には眼鏡をかけている人などおらず、需要があるとは思えないのだ。
しかし、幸八はこれから本や新聞を読む人が増え、眼鏡が爆発的に普及すると1年がかりで兄を説得。明治38年、村人たちが反対する中、2人は工場を立ち上げる。
今に続く福井県の眼鏡産業の基礎を築いた兄弟を主人公にした評伝小説。(ポプラ社 1600円+税)