「鉄路の果てに」清水潔著
亡くなった父の書棚に「シベリアの悪夢」という本があった。父の筆跡で「私の軍隊生活」と書かれたメモが貼ってあり、隅に「だまされた」と書かれている。表紙裏の地図には、日本列島からユーラシア大陸まで赤い線が引かれている。父は戦争体験を語らなかった。2019年1月、著者は友人と、赤い線をたどる旅に出る。
かつて朝鮮半島を走っていた京義線は中国、ロシアへと続き、欧州とアジアを結ぶ「欧亜の鉄路」だった。日本の鉄道省が作ったキャッチフレーズは「一枚ノ切符デヨーロッパヘ」。だが、「欧亜の鉄路」は、ロシア革命や日中戦争などで何度も遮断される。
ジャーナリストが父の足跡から戦争をたどる。
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