<第16回>「勝新太郎と同じくらい、寝起きが悪いと言われた」
【無宿 やどなし (1974年・東宝)】
勝新太郎、高倉健が共演した映画である。
全編、映像が美しい。日本の海、山の美しさを追いかけて撮っている映画だ。勝新太郎が高倉健との映画を熱望し、やっと実現しただけに、勝新は高倉健に恋焦がれているふうに見える。一方、高倉健は勝新の気合を受け止めるのではなく、サラリと受け流している。そして、間にいる梶芽衣子はふたりの間をゆらゆらと揺れ動く。
よく語られていることではあるが、本作はカルト的な人気を持つフランス映画「冒険者たち」を土台にしたものだ。ただ、テーマの描き方が違っている。「冒険者たち」では主役の3人、アラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラ、ジョアンナ・シムカスが宝探しに熱中する。宝探しの映画である。一方、「無宿」は宝探しをしようということになっているが、勝新、高倉、梶芽衣子の3人は美しい風景のなかをただただ旅をする。
全編が同じ調子で貫かれているために、どこが見どころだと指摘するのは難しい。本作に出てくる風景も含めて、すべてを眺めているうちに心地よくなってくる映画だ。