「タモリと戦後ニッポン」著者が解く「ヨルタモリ」人気の秘密
近藤氏は同書で、デビュー以来のタモリをめぐる言説を膨大な出版物や資料をもとに検証し、さらに青年期のタモリをよく知る人物にも取材。その上で、終戦直後に生まれたタモリの足跡と戦後の日本の歩みを考察している。
同氏によれば「『ヨルタモリ』の構成は出世作である『今夜は最高!』(日本テレビ系、80年代)を彷彿とさせるとともに、トークの合間に流れるタモリの寸劇では彼の往年のネタを多く復活させている。それらにはタモリの生まれ育った環境に由来するものも多い」と言う。
たとえば、ショートコントのひとつである「Mr.炒飯」。そこではタモリがデタラメな中国語を話すコックに扮し、どんな料理もチャーハンにしてしまう。
「料理好きとして知られるタモリですが、それは祖母の教えによるところが大きい。そしてデタラメな中国語は得意のインチキ外国語芸のひとつです。彼の生まれ育った福岡は地理的な位置から韓国や中国のラジオ放送などがクリアな音で受信できたし、高校時代には世界中の短波放送が拾える通信型受信機を自らつくっています。これが後年の芸の格好のネタ元になったのはいうまでもありません」(近藤氏)
ほかにも「早大時代の仲間と共有した時間や笑いが原点だと考えられるネタが多くある」と話す。