加藤健一事務所「女学生とムッシュ・アンリ」
小笠原響の演出も緻密。コメディーの要である会話のテンポの良さはいうに及ばず、瀬戸のセリフを受ける加藤健一の「間」がいつもながら絶妙。気弱な夫がハマリ役の斉藤はドアを開けておずおずと入るしぐさだけで笑いが巻き起こる。加藤忍が義父に疎んじられながらも夫を慈しむ妻役を好演する。
笑いの中に人生の真理を織り込むフランス喜劇。
「人生は成功するか失敗するかで決まるのではない。肝心なものはほかのどこかにあると、今は思う」
最終章、死期を悟ったアンリが残した「真意」が胸にしみる。
舞台上でコンスタンスがピアノを弾く重要なシーンがあるが、9カ月間の特訓を積んだとのことで瀬戸が生演奏。これがまたプロが裸足で逃げ出す素晴らしさ。
作=イヴァン・カルベラック、訳=中村まり子。13日まで新宿南口・紀伊國屋サザンシアター。
★★★★☆