35歳でプロ再挑戦 脱サラ棋士・瀬川晶司氏「決断の瞬間」

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 転職活動は会社に内緒でこっそり進めていた。

「マイナーな世界だから、バレないと思っていたのですが、新聞などに取り上げられるようになって、隠すに隠せなくなりました。何を言われても仕方ないと覚悟しましたが、当時の社長も応援してくれて。『好きなことをするのが一番だから、ダメなら戻ってこい』と。サラリーマン生活で得たのは、そんな人間関係です。将棋の世界は、勝つか負けるか。喜びもつらさも個人で完結しますからね。昔の仲間とは今でも年に数回、交流がありますよ」

 編入試験は、瀬川さん個人のために組まれた異例の6番勝負だった。

「神様とかを信じるわけではないけれど、この時ばかりは、『プロになれれば、神様がOKしてくれたことになる。ダメなら、趣味として楽しみなさいと言われているんだ』と思うようにしました。これが“最後”と割り切っていたし、どれだけ努力しても負ければゼロ、すべてが決まると。年を取っているからできないということはありません。心に決めていることがあれば、まずは家族や親しい人に話してみてください。本気が伝われば、賛成してくれますから。あれから10年、40代も半ばですが、『まだ、これから』だと思っています。タイトルも欲しい。対局の朝は、今でも緊張で眠れないことがありますよ。でも、最後は『命までは取られないから』と気持ちを前に持っていきます」

▽せがわ・しょうじ 1970年3月23日、神奈川県横浜市出身。84年、全国中学生選抜将棋選手権大会で優勝し、安恵照剛門下で奨励会に入会。96年に退会後、97年神奈川大進学、01年に就職、05年プロ入り。現在、五段。

【連載】証言特集 私はこんな「勝負」で勝ってきた

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