映画シン・ゴジラが踏み潰した 集団的自衛権の欺瞞と現実
12年ぶりの東宝版ゴジラとなる最新作「シン・ゴジラ」の評判がすこぶるいい。動員数ランキングでは初登場1位、堂々のシリーズ復活を遂げた形だが、本作はこの夏最大の話題作といわれながらも通常のマスコミ向け試写会を行わず、公開までストーリーの詳細すら明かさぬ秘密主義を貫いていた。
その宣伝戦略について、映画批評家の前田有一氏はこう分析する。
「昨年末に公開された『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』と同じく、圧倒的知名度を誇るタイトルだからこそ出来たといえます。情報の出し惜しみがファンの飢餓感をあおり、爆発的なスタートダッシュにつながった。本来なら、長谷川博己や石原さとみをはじめ総勢325人ものキャストに、おのおのテレビで宣伝をさせるなんてやり方もできたのに、東宝はしなかった。中身に絶対の自信があり、口コミで広がる確信があったのでしょう」
作風はこれまでの娯楽色の強い怪獣映画とは異なり「もし現実の日本にゴジラが現れたら政府はどう対処するか?」をノンフィクションタッチで描いたリアルな政治ドラマだ。庵野秀明総監督はこのシミュレーションを「日本VSゴジラ」と銘打ち、自衛隊はじめ関係省庁にリサーチして自ら脚本化した。見せ場となる首相官邸などでの会議シーンでは、聞きなれない政治・専門用語が解説もなくひっきりなしに飛び交う。