アニメ映画で主演声優 能年玲奈から脱皮した“のん”高評価
「のん」という新しい芸名で、能年玲奈(23)が芸能活動をリスタートさせたのは記憶に新しい。所属事務所「レプロエンタテインメント」から“独立後”、一発目の仕事は女優ではなく声優。11月12日公開のアニメ映画「この世界の片隅に」(片渕須直監督・脚本、東京テアトル配給)の主人公すず役に抜擢されたのだ。
本作のマスコミ向け試写は始まったばかりだが、早くも評判は上々。125分間の上映後には室内のあちこちですすり泣く声が聞こえていた。「午前32時の能年玲奈」(河出書房新社)の著者で作家の中森明夫氏もそのひとりで、「冒頭の青空に『のん』というクレジットが映し出された時はウルッときましたね。あぁ“能年玲奈”がスクリーンに戻って来たんだ! と感無量でした」と話す。
原作は、こうの史代氏の同名漫画。広島市内で生まれた少女が、昭和19年、18歳で軍港の町・呉に嫁ぎ、次第に厳しくなる戦況の中でも力強く生きるさまを描いている。
「主人公のすずと能年は、ともに絵を描くのが好きなど複数の共通点があります。なかでも、主人公が空襲の爆弾で近しい人を失い、また自らの身体も不自由になって喪失感を抱きながらも毅然と前を向いて歩いて行こうとする生きざまは、事務所独立騒動による女優生命の危機を乗り越え、活動再開となった能年本人の境遇と重なる部分がある。技術面でいえば、能年よりうまい声優がいたかもしれませんが、彼女は試練を受けた役を見事に表現していた。朝ドラからそのままスター街道を突き進んでいたなら、能年がこの作品に出合うことはなかったはず。この作品にはキラキラした『あまちゃんの能年』は存在しない。芯の強い主人公に自身を投影させているかのように見えました」(中森氏)