ただの西部劇にあらず ドンパチに隠された「赤狩り」批判
本作を一言で表すと「孤立無援」だ。ケインは友人らに協力を要請するが居留守を使われたりで誰も味方になってくれない。教会では多くがケインの業績を称え、協力のそぶりを見せる者もいるが、実際に立ち上がることはない。彼らは無法者のミラーが戻ってきても新任の保安官が退治してくれると理想論を述べる。酒場の男はケインがミラーを逮捕する前のほうがよかったと敵意をあらわに。現代の日本でもヤクザが威張り散らした時代を懐かしがる人間がいる。
見どころはケインとミラー一味の撃ち合い。ケインは孤軍奮闘し、人々は遠くで銃声を聞く。決着がついた時、民衆は手のひらを返して集まる。人間の本性がむき出し。これでは君が代を歌わず日の丸に頭を下げない人が村八分になるのも当然だろう。
(森田健司/日刊ゲンダイ)