心を震わせた傑作名作を述懐 今の若者たちよ、欲を出せ!
今、若者を映画館に引き寄せた映画を見直してみたい。高校生になったばかりで性に飢えていた時に見たのは、大島渚が松竹を退社して作った「白昼の通り魔」(66年)だ。エロチックで人間の欲を正直に捉えた問題作で刺激された。同じ頃に見た内田吐夢巨匠の「飢餓海峡」(65年)は言わずもがな、人の業が生む犯罪劇の大傑作だ。ここで逃亡犯の三国連太郎は一世一代の演技を3時間見せてくれる。16ミリの白黒フィルムで撮られてるのに、そこに登場した、さまざまな人の業の色合いがそれぞれに違って見えるのが不思議だ。この時の編集作業を巡って、内田監督は東映と喧嘩して去った。監督たちは闘っていた。
今村昌平監督の「復讐するは我にあり」(79年)は緒形拳が狡猾な殺人者になりきっている。人間の悪の本性がえぐり出されると、かえって楽しいものだ。大阪・新世界の小屋で見た時、何があろうが、誰が前に立ち塞がろうが闘ってやるぞと誓った。
サム・ペキンパー監督もメジャー映画界の中で自己の映画美学を盾に闘っていた。D・ホフマン主演の「わらの犬」(71年)やS・マックイーンの「ゲッタウェイ」(72年)は無論のこと、「ガルシアの首」(74年)もファミリー向けの慰み物ではない。孤独で明日の仕事もない代わりに夢だけは抱えていた当時の若者が心を震わせた痛快作だ。
■映画「無頼」絶賛公開中! 詳細はHPで