「貧困とは何か」志賀信夫著
「貧困とは何か」志賀信夫著
かつて「貧困」という概念(貧困の意味)は、「食べることができないほどの生活状態」に限定されていた。しかし、現在では「食べることができているから」といって貧困ではないと断定することはできない。人々の諸関係の中で紡ぎ出される「規範(=社会規範)」が変化し、それが貧困概念を拡大させたからだ。
日本の憲法は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とするが、安倍政権下で生活保護基準は「絶対的貧困」と呼ばれる水準にまで引き下げられ、「健康で文化的な最低限度の生活」との距離が拡大している。
この不寛容な国家と社会は、人を殺し、今も殺し続けていると著者は指摘する。
貧困理論の歴史的展開を振り返り、現代の貧困をどのように理解すべきかを解説したテキスト。 (筑摩書房 968円)