時代のトップを走っている人のおいしいところを摘み取る
仕事では、京平先生が「これは、こうです」と言ったものはすべて先生の指示通りにしましたね。そして、それがものの見事に当たる、だからどんどん尊敬の念が募るわけです。僕の方から音楽的なことで口を出すことはなかったですね。
京平先生が僕を起用したのは、世の中でアコースティックなフォークソングがウケていた時代に自分の今までの音楽の作り方とは違うアレンジャーとやらないと、世の中には受け入れられないかもしれないと考えたからじゃないでしょうか。それで僕を起用した。先生は時代の流れを敏感に感じ取る方で、ご自分でもよくおっしゃっていました。「時代のトップを走っている人のおいしいところを摘み取るのがヒットには大事なんだ」って。だから「え!? この人とやるの」っていう意外な作家との組み合わせがとても多いんです。
京平先生は表舞台には出ない方でした。姿をさらしたくないし、さらすものではないと考えてたんですね。写真もとても少ない。「作家が表に出てあーだこーだ言うもんじゃない。自分の作品でものを言いなさい」という考えを身をもって示していましたね。
先輩の萩田光雄さんも表に出ない方です。小室哲哉さんが出てきて、曲を作る人が表舞台に出る時代になりましたが、僕らは黒子のまま京平先生の教えを守ってきました。(つづく)