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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

NHK・Eテレが攻める「植物に学ぶ生存戦略」は知的遊戯

公開日: 更新日:

 NHK・Eテレには「いつ放送されるか分からないシリーズもの」という不思議な番組が存在する。

 この不定期レギュラーにおいて、「香川照之の昆虫すごいぜ!」と並ぶ傑作と呼べるのが「植物に学ぶ生存戦略」だ。俳優の山田孝之が、植物の生態を「擬人化」して語るマニアックな内容は、一度見たら病みつきになる。聞き手は林田理沙アナウンサー。

 先週25日、昨年の夏以来となる待望の第5弾が放送された。3つの植物が登場したが、ツバキと西麻布が同じ「生存戦略」だという説明に笑った。キーワードは「一見さんお断り」だ。

 ツバキは冬にだけ花を咲かせ、しかも虫ではなく鳥だけに花粉を提供する。それが最寄り駅もなく、客をセレブに限定した西麻布と共通しているというのだ。「(女性の)お持ち帰りはタクシーです」と真顔で話す山田。真面目な顔で聞く林田。微妙な間がおかしい。

 さらに西麻布では、客に「特別感」を与えるために、店の扉を暗証番号で開けさせたりする。それは横向きに花を咲かせ、長いクチバシを持つ鳥だけを受け入れるツバキに通じるそうだ。山田が「私は西麻布の王です」と林田を誘う。それを聞き流して、「ありがとうございました」と締めくくる林田がいい。

 民放の深夜枠でも真似できない、テレビならではの知的遊戯。“攻めのEテレ”に拍手だ。

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