浪人期間も「予備校で勉強する合間を縫って落語会に行ってました」
念願の阪大美学科に入学してどうだったか。
「まず、落語研究会には入りませんでした。素人特有の変な癖が付くのが嫌なんで。美学科の同級生は、各自が歌舞伎、文楽、宝塚歌劇など好きなものがあって、それぞれが熱く語るんです。僕は上方落語について熱く語りました。落語に出てくる歌舞伎狂言を見に行ったり、噺の元になっている能狂言を見たり、他の伝統芸能をたくさん見たことも、後に血肉となりました。4年間の学生生活も無駄ではなかった」
卒論のテーマは、「上方落語におけるお囃子の効果について」だったとか。
「噺の中に入るお囃子を『はめもの』と言います。染丸師匠(当時は染二)が得意としていた芝居噺や音曲噺には必ずはめものが入りますので興味があったんです。その取材のために、染丸に初めて会いました。師匠の会に通っていたので、僕の顔を知ってはりました。いつもお囃子さんが見える席に座ってましたから。取材を終えて帰る間際に、『卒業したらどないするつもりや』と聞かれたので、よっぽど『弟子にしてください』と言おうと思うたのですけど、よう言わなかったんです。『考えてます』と答えました。というのも、大学院へ進むという選択肢もありました。両親はそうするものと思っていたみたいです」 =つづく