倍賞千恵子主演「PLAN 75」が描く超高齢社会 この世に“いらない人間”は存在するのか
冒頭、ひとりの男が何処かの施設の居住者を大量虐殺したシーンから物語の幕が上がります。そして2016年に起こった相模原障害者施設殺傷事件を彷彿させる言葉を犯人は呟くのです。
果たして「いらない人間」はこの世に存在するのでしょうか? きっと早川監督はこの言葉に疑問を抱き、更に探求すべく長編として映画制作に踏み込んだのではないでしょうか。
■無縁社会の今、理想の最期とは?
少子化が進み、孤独死も問題になっている昨今。子どもがいない夫婦や独身で生涯を終える人も増えてきた今、将来への不安はとても身近なものになっています。たとえ血を分けた子どもといえど親の面倒を見るために生まれてきたわけではありません。しかし、身寄りの無い高齢者に社会は冷酷であり、映画ではその状況が淡々と描かれていきます。
今やネット社会により、人と人が顔を合わせて語らうことが昔ほど減ったことから、他者に対して無関心になって来ているといいます。核家族化が進み、若者が高齢者と接する機会も減り、話を聞かずとも歴史についてもネットで検索出来てしまう現代。本作は磯村勇斗や河合優実演じる若者たちが、孤独な高齢者たちと対面でしっかり交流することで芽生える感情が胸を打ちます。