濱口竜介監督が証明する健全なワークショップの必要性、監督が俳優に教えるモノとは?
第94回アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した濱口竜介監督。しかも4部門(作品賞・監督賞・脚色賞・国際長編映画賞)ノミネートのうち、作品賞と脚色賞に名を連ねたのは日本映画初という快挙を果たしました。
それを記念して濱口監督の初期作や話題作を上映したミニシアター3館が手を組み、合同特別上映を企画。情熱こそが真実なのかと真実の愛を探求する『PASSION』(2008年)はユーロスペース、演劇を生み出す恋人の本心を引き出そうとする『親密さ』(2012年)はポレポレ東中野、立場の違う4人の女性達の解放を描く『ハッピーアワー』(2015年)はシアター・イメージフォーラムでリバイバル上映されました。
興味深いのはどれも恋愛映画であり、理解し合えない男女を描いたもので、3作品とも相手の心を開示するため対話を試みるシーンが長尺で映し出されています。それはまるでワークショップのようで、テーマを決めて対話を展開しながら相手や自分の本心を引き出そうとするものでした。
例えば『PASSION』では、長く付き合った恋人との結婚を控え「自分は一体、誰を愛しているのか、どんな人間なのか」を知りたい為に、親友と気になる女性を巻き込んで質問に本音で答え合うというゲームを始めます。やがて3人の関係に変化が訪れ、衝動的な感情に身を委ねるのです。