自分は「負け試合を飲める」のか…ケンドーコバヤシが求める芸人の気概
そもそも、ケンコバの笑いは客に向いておらず、舞台袖の芸人に向けていたのだ。そんなコバのお笑い観が変わる転機になったのは、横山ノックが知事時代に「知事と一緒に稚魚を川に流そう」というイベントに駆り出されたとき。子供たちに向かって「放流するぞ!」と声をかけているノックにドロップキックを決め、「おまえら見とけ! 今からこのタコ、川に放り込んだらぁ!」と掴みかかった。が、気づいたらSPの膝の下で寝ていたという。
そのとき目を開けたら、ノックがその場を収めるため、子供たちに向かって「タコ踊り」をしていた。
「芸人ってこうやねんって教えていただいた。『これや、芸人は!』って」(テレビ東京系「あちこちオードリー」21年4月28日)
やがてケンコバは舞台袖の芸人に向けていた笑いを“客席にいる自分”に向けるようになった。コバは芸人に一番必要な気概は「負け試合を飲める」ことだと言う。
「男なんで勝ちたいし、かっこよく終わりたいっていう欲望がある中で、『自分がかっこ悪いほうが、みんな盛り上がれる』と、そこ飲み込めるかどうか」(ディーエムソリューションズ「MOBY」18年8月19日)だと。
ケンコバは「過激であればあるほど、自分に刃が向くようにしています」(ヤフー「Yahoo!ニュース特集」20年12月2日)と言う。笑いも刃もすべて自分に向ける。基準は全て自分。だから唯一無二の芸風が生まれたのだ。