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てれびのスキマ 戸部田誠ライタ―

1978年生まれのテレビっ子ライター。「芸能界」というビジネスは、いかにして始まったのか。貴重な証言を収録した「芸能界誕生」(新潮新書)。伝説の番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」を基に描く青春群像ノンフィクションノベル「史上最大の木曜日 クイズっ子たちの青春記」(双葉社)。2つの最新著が絶賛発売中!

自分は「負け試合を飲める」のか…ケンドーコバヤシが求める芸人の気概

公開日: 更新日:

 そもそも、ケンコバの笑いは客に向いておらず、舞台袖の芸人に向けていたのだ。そんなコバのお笑い観が変わる転機になったのは、横山ノックが知事時代に「知事と一緒に稚魚を川に流そう」というイベントに駆り出されたとき。子供たちに向かって「放流するぞ!」と声をかけているノックにドロップキックを決め、「おまえら見とけ! 今からこのタコ、川に放り込んだらぁ!」と掴みかかった。が、気づいたらSPの膝の下で寝ていたという。

 そのとき目を開けたら、ノックがその場を収めるため、子供たちに向かって「タコ踊り」をしていた。

「芸人ってこうやねんって教えていただいた。『これや、芸人は!』って」(テレビ東京系「あちこちオードリー」21年4月28日)

 やがてケンコバは舞台袖の芸人に向けていた笑いを“客席にいる自分”に向けるようになった。コバは芸人に一番必要な気概は「負け試合を飲める」ことだと言う。

「男なんで勝ちたいし、かっこよく終わりたいっていう欲望がある中で、『自分がかっこ悪いほうが、みんな盛り上がれる』と、そこ飲み込めるかどうか」(ディーエムソリューションズ「MOBY」18年8月19日)だと。

 ケンコバは「過激であればあるほど、自分に刃が向くようにしています」(ヤフー「Yahoo!ニュース特集」20年12月2日)と言う。笑いも刃もすべて自分に向ける。基準は全て自分。だから唯一無二の芸風が生まれたのだ。

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