市川猿之助の騒動に思う…昔は「歌舞伎役者は治外法権」という言葉があった
隠し子は当たり前、謝罪すれば舞台復帰
昔は、「歌舞伎役者は治外法権」という言葉がマスコミの中にあった。問題を起こしても謝罪したら大目に見られ、仕事復帰できたもの。この流れで香川照之は市川中車として歌舞伎舞台で復帰しているし、2年前に少年へのわいせつ行為をした疑いで逮捕された役者も結構な早さで舞台に戻った。また、海老蔵時代に不祥事があった市川団十郎も無事に襲名している。余談だが、京都のホテルで舞妓と密会し、彼女の帰り際に部屋のドアを開け、さらに自分のバスローブまで開けて“ご開チン”した大物役者もいた。その際、僕らマスコミに囲まれながら本人は笑い飛ばし、奥さまも「芸人ですから」と不問に付したものだ。もっと昔の歌舞伎担当の記者たちは「役者に隠し子なんていくらでもいる。知ってても書かないよ」などと話していたものだ。
ただ、時代と共に歌舞伎役者を取り巻く事情は変わってきた。以前の歌舞伎といえば、ワンマン社長などまとめてチケットを買ってくれる“太いご贔屓筋”が役者たちを支えていた。今はそういった人物も少なくなり、その代わりに日比谷や銀座のOLさんたちにチラシをまくなどして一般の歌舞伎ファンを拡大しようとしている。特に猿之助はスーパー歌舞伎のワンピースなどで若いファンを獲得してきたのだから、不祥事があればネットですぐに拡散されるし、イメージダウンは計り知れない。
今回のハラスメント報道は猿之助本人はもとより、ご両親にとってもショックだったのではないか。老老介護だった両親には厳しいものが重なり……と考えるといたたまれない思いだ。