シモーヌ・ヴェイユの生涯描く映画に奮い立つ 世界の地獄化を止める唯一の方法は「声を上げること」
『シモーヌ』とは、女性として初めて欧州議会議長を務めた、フランスの政治家シモーヌ・ヴェイユ(1927年生まれ、2017年没)のこと。同名の伝説的哲学者(ただし苗字のスペルは違う)と混同するなかれ。政治家シモーヌは、保健大臣時代の1974年に、カトリックの男性議員が多勢を占めるフランス国会で中絶法を勝ちとったことで知られる。そのとき国会で、レイプによる悲劇、違法中絶の危険性、若いシングルマザーの困窮を訴えた演説(「中絶が悲劇だと確信するには、女性に聞けば十分です」)の再現シーンは、本作の大きな見どころのひとつ。彼女の言葉の力は圧倒的な反対意見を退け、人工妊娠中絶の合法化を実現した。この法律は後年「ヴェイユ法」と呼ばれることになる。
シモーヌはとにかく国民人気が高かった。亡くなる前年の「好きな著名人ランキング」で人気芸能人やアスリートを押さえ2位に選ばれ、狭き門で知られる国廟パンテオンに埋葬されたほど。作品パンフレットでフランス在住ジャーナリスト髙崎順子さんのコラムを読んで、人気の主たる理由は中絶法を実現したこと、ホロコースト体験の優れた語り部だったこと、欧州議会議長を務めたことの3つであると知った。ところで、このパンフレットは買いである。