著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

妻の実家の居間の壁に飾られた見慣れない刺繍絵をめぐるエピソード

公開日: 更新日:

 義母が久しぶりに時計屋に足を運んだのは昨春のこと。銀婚式の記念に夫婦で買った腕時計の、もう何度目かのベルト交換。これから季節もよくなるし、コロナの猛威も収まってきているようだから、外出する機会も増えるかも。そう思った彼女は、ベルトの傷みが目立ってきた自分の腕時計を預け、翌週引き取る約束をして店を出た。

 その週末、時計屋の妻から電話がかかってきた。彼女は預かっていた腕時計を紛失したことを告白し、「思い出のお品をなくすなんて」と涙声で詫びた。どんな言葉がその場にふさわしいのか、すぐには分からなかった義母は「気にせんでください」と言うのがやっとだったという。

「お母さん、それは人が良すぎでしょう」一年近くも前の出来事をいま知ったばかりのぼくが、思わず言葉を荒げる。「だって相手は身内や友だちじゃない。お店なら保険にだって入ってるはずです」だが義母は「保険に入る余裕はないと思うよ、あの店は」と笑うばかり。まったく埒が明かない。怒りの矛先は顔も知らぬ時計屋夫婦から、目の前で笑みを浮かべる義母その人へと向かおうとしている。

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