窓辺に腰掛け、月を見ながら「俺は情けねえな」と呟いた
ぽつぽつと仕事は増えているのに、モヤモヤする。何か迷いがあって集中できない。1980年代の後半はそんな悩みを抱えていた。確か、87年だったと思うが、田原俊彦さんの「ドラマ特番」に呼ばれた。その時、ちょっと風邪気味だったが、それほどでもないので、衣装合わせを済ませ、撮影現場に入った。すると、監督がいきなり、「こいつ、ちょっと、あんまりよくないから代えよう」と言い出し、降ろされてしまった。
これは正直、ショックだった。衣装合わせまでして降ろされるなんて、ふつうではあり得ないからだ。やはり、自分の中の集中力の欠落が見抜かれていたのだろうか?
ますますモヤモヤしているところに、忘れもしない87年の9月30日である。所属していた事務所、スカイコーポレーションの本間社長に呼び出されたのである。
■「役者を辞めて、マネジャーになりなよ」
やり手の女社長で、事務所を立ち上げた時は建築家のご主人がいたが、その後、別れて、暴走族ブラックエンペラーを率いていた異色俳優、本間優二と再婚したことは以前、書いた。さすがに週刊誌ネタになったが、そんなことは気にしない豪快やり手社長である。ただし、ズケズケものを言う。初対面の時も顔を見るなり、「三浦友和のNGみたいな男はダメなのよね~」とケチョンケチョンだった。当時のご主人がとりなし、なんとか事務所に置いてもらったのだが、その本間社長が僕を呼び出すと、こう切り出してきたのである。