吉永小百合の夫が亡くなった…結婚前後のサユリストの“熱狂と羨望と絶望”を振り返る
小百合の結婚前と後に公開された映画がある。「男はつらいよ 柴又慕情」と「男はつらいよ 寅次郎恋やつれ」である。「柴又慕情」は福井を旅行中に寅と出会うOL役で、父親との関係に悩んでいるという設定。寅が写真を撮ってやるとカメラを構え、「ハイチーズ」というところを「バター」といって小百合が笑い転げるシーンは、彼女の若さがはじけていた。
一転、2年後に公開された「恋やつれ」は、父親の反対を押し切って男と駆け落ちし、男の故郷で結婚生活を始めたが、2年後に夫が病死してしまった寡婦の役である。山田洋次監督の思惑が透けて見える。
私たちサユリストは、結婚前と結婚後で、小百合がどう変わったのかを“検証”するために、この映画を何度も食い入るように見た。明らかに若い女性から“女”に変身していた。その夜は、ゴールデン街で惚けるまでやけ酒をあおった。
結婚前、作家の遠藤周作から、「君は亭主が歯槽膿漏でも、その歯ブラシを使えるか」と聞かれ、小百合は「ハイ、使えます」と答えた。これを読んだときの絶望感を、今でも覚えている。