中原中也、小林秀雄、長谷川泰子の三角関係…彼らはなぜ愛し、そして憎んだのか?

公開日: 更新日:

呆れてしまうほど複雑な男女関係

 小林は中也の才能を称揚し、無償の協力を申し出る。中也はそんな小林を信頼しつつも破天荒な振る舞いから抜け出そうとしない。泰子は2人の男の間を木の葉のように舞い、結果的に中也を精神的に追い詰める。

 泰子には新進女優らしい芯の強さがあった。妥協を許さない性格なのだ。中也の甘えたい願望を満たしてはくれるが、多くの場面で衝突する。泰子は小林に安寧を求めて去っていく。

 中也は泰子に裏切られたものの未練たらたらだ。「箸や茶碗もいるだろう」と泰子の荷物を届け、2人の新たな生活に踏み込んでくる。その結果、小林は泰子を抱くことで中也を自分の中に取り込んだような発言をし、ついには泰子から逃げようとする。

 呆れてしまうほど複雑な男女関係。誰が悪いのか。本作を見れば中也が張本人であることが分かる。幼児のようにわがままを押し通し、周囲の人を傷つけ、そのあげく自分を貶めるのだ。

 だがその無軌道な生き方が数々の傑作詩編を生んだ。

 劇中で小林は中也の「朝の歌」を朗読する。

 「天井に 朱(あか)きいろいで
 戸の隙を 洩れ入る光、
 鄙(ひな)びたる 軍楽の憶(おも)い
 手にてなす なにごともなし。」

 読み終えた小林は「中原、やはりおまえは天才だよ」と満面の笑みで喜びを表現する。

 中也のファンと話をすると、その多くが「中也は天才」「生まれ持っての才能だ」と、小林と同じように賞賛する。中也は社会生活の破綻者であるがゆえに、優れた文学作品を創造しえたのだろう。破滅型の天才とそれに振り回される人間の右往左往がこの映画の見どころだ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  2. 2

    人事局付に異動して2週間…中居正広問題の“キーマン”フジテレビ元編成幹部A氏は今どこで何を?

  3. 3

    中居正広氏&フジテレビ問題で残された疑問…文春記事に登場する「別の男性タレント」は誰なのか?

  4. 4

    おすぎの次はマツコ? 視聴者からは以前から指摘も…「膝に座らされて」フジ元アナ長谷川豊氏の恨み節

  5. 5

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  1. 6

    萩原健一(6)美人で細身、しかもボイン…いしだあゆみにはショーケンが好む必須条件が揃っていた

  2. 7

    フジテレビに「女優を預けられない」大手プロが出演拒否…中居正広の女性トラブルで“蜜月関係”終わりの動き

  3. 8

    TV復帰がなくなった松本人志 “出演休止中”番組の運命は…終了しそうなのは3つか?

  4. 9

    "日枝案件"木村拓哉主演「教場 劇場版」どうなる? 演者もロケ地も難航中でも"鶴の一声"でGo!

  5. 10

    “年収2億円以下”マツコ・デラックスが大女優の事務所に電撃移籍? 事務所社長の“使い込み疑惑”にショック

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    べた褒めしたベッツが知らない、佐々木朗希"裏の顔”…自己中ぶりにロッテの先輩右腕がブチ切れの過去!

  2. 2

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  3. 3

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  4. 4

    巨人・田中将大“魔改造”は道険しく…他球団スコアラー「明らかに出力不足」「ローテ入りのイメージなし」

  5. 5

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  1. 6

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  2. 7

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…

  3. 8

    佐々木朗希を徹底解剖する!掛け値なしの評価は? あまり知られていない私生活は?

  4. 9

    大阪・関西万博の前売り券が売れないのも当然か?「個人情報規約」の放置が異常すぎる

  5. 10

    僕に激昂した闘将・星野監督はトレーナー室のドアを蹴破らんばかりの勢いで入ってきて…