井筒和幸×奥山和由ガチンコ対談 令和の映画に希望はあるか

公開日: 更新日:

大手3社と一線を画す第四極

奥山 予算300万円で大ヒットした「カメラを止めるな!」(17年)とかは大成功事例だし、見ればなるほど、その手があったか、器用だなと感心はするけどやっぱり映画的な熱量が圧倒的に不足してるよね。

井筒 リスクばっかり計算してたらいい映画なんかできへんよ。

奥山 いまの映画界はリスク分散のための製作委員会というコルセットで窒息してる。

井筒 奥山さんだから言うけど、大手映画会社3社と一線を画す第四極をつくりたいってずっと思ってるのよ。

奥山 楽天の三木谷さんとかネットフリックスとかアマゾンとか、巨万の富を持っていて投資先を探しているところはいくつもある。井筒さんみたいに目立つ人が提言するしかないですよ。

 ――令和の新時代にアツい映画の復活はあるのでしょうか。

奥山 僕は平成の反動で、隙間をついて突破口を見いだすやつが必ず出てくると思う。

井筒 先達がやり残してたり、ガーンとおもろい企画なんかまだいっぱいあるよ。俺、ノモンハン事件を映画化する構想があるんよ。

奥山 令和はそういう企画を全部棚卸しして片っ端からやっていく時代になりますよ。たとえば黒沢映画の大番頭だった本木荘二郎って人の一生とか映画化できたら面白すぎるからね。「七人の侍」(54年)で監督が途中で予算使い切ったとき、追加交渉した裏話なんかは全部この人がやった。

井筒 知ってる。途中で岸本恵一って名前に変えて、なぜかピンク映画を作ったりね。

奥山 いつしか黒沢監督から離れて、最後はピンク女優と同棲し、6畳一間で孤独死した波瀾万丈の人生です。

井筒 そういう、なんで映画化してないんだっていう話がゴロゴロしてる。

奥山 すごくいい脚本、何冊もありますよ。田中陽造(「最後の忠臣蔵」)が書いた「痴人の愛」。あれは亡くなった若松さんがやろうとしてたんだけどね。

井筒 若松さんの「痴人の愛」、見たかったな……。

奥山 ホンが抜群にいいんですよ、誰かやってくれないかなあ。

井筒 俺やるわ。

奥山 えっ、本当? ぜひやって! あれは傑作。

井筒 じゃあ、丸裸のすっぽんぽんになれる女優を見つけなきゃな。奥山さん、一緒に作ろ。

(構成=映画批評家・前田有一)

▽いづつ・かずゆき 1952年生まれ。奈良県出身。代表作に「ガキ帝国」(81年)、「二代目はクリスチャン」(85年)、「犬死にせしもの」(86年)、「岸和田少年愚連隊 BOYS BE AMBITIOUS」(96年)、「のど自慢」(99年)、「パッチギ!」(2005年)など。現在、本紙でコラム「怒怒哀楽劇場」(金曜掲載)連載中。

▽おくやま・かずよし 1954年生まれ。20代からプロデューサーとして活躍。主な作品に「ハチ公物語」「226」「その男、凶暴につき」「GONIN」「いつかギラギラする日」「RAMPO」「ソナチネ」「うなぎ」「地雷を踏んだらサヨウナラ」「銃」など。カンヌ国際映画祭パルムドール賞、日本アカデミー賞優秀監督賞、脚本賞、企画賞など多数受賞。最新作「エリカ38」が6月公開。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    ビートたけし「俺なんか悪いことばっかりしたけど…」 松本人志&中居正広に語っていた自身の“引き際”

  2. 2

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘

  3. 3

    フジテレビに「女優を預けられない」大手プロが出演拒否…中居正広の女性トラブルで“蜜月関係”終わりの動き

  4. 4

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  5. 5

    元フジテレビ長谷川豊アナが“おすぎ上納”告白で実名…佐々木恭子アナは災難か自業自得か

  1. 6

    中居正広氏&フジテレビ問題で残された疑問…文春記事に登場する「別の男性タレント」は誰なのか?

  2. 7

    人事局付に異動して2週間…中居正広問題の“キーマン”フジテレビ元編成幹部A氏は今どこで何を?

  3. 8

    萩原健一(6)美人で細身、しかもボイン…いしだあゆみにはショーケンが好む必須条件が揃っていた

  4. 9

    TV復帰がなくなった松本人志 “出演休止中”番組の運命は…終了しそうなのは3つか?

  5. 10

    別居から4年…宮沢りえが離婚発表「新たな気持ちで前進」

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ吉井監督が佐々木朗希、ローテ再編構想を語る「今となっては彼に思うところはないけども…」

  2. 2

    20代女子の「ホテル暮らし」1年間の支出報告…賃貸の家賃と比較してどうなった?

  3. 3

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  4. 4

    「フジ日枝案件」と物議、小池都知事肝いりの巨大噴水が“汚水”散布危機…大腸菌数が基準の最大27倍!

  5. 5

    “ホテル暮らし歴半年”20代女子はどう断捨離した? 家財道具はスーツケース2個分

  1. 6

    「ホテルで1人暮らし」意外なルールとトラブル 部屋に彼氏が遊びに来てもOKなの?

  2. 7

    TKO木下隆行が性加害を正式謝罪も…“ペットボトルキャラで復活”を後押ししてきたテレビ局の異常

  3. 8

    「高額療養費」負担引き上げ、患者の“治療諦め”で医療費2270億円削減…厚労省のトンデモ試算にSNS大炎上

  4. 9

    フジテレビに「女優を預けられない」大手プロが出演拒否…中居正広の女性トラブルで“蜜月関係”終わりの動き

  5. 10

    松たか子と"18歳差共演"SixTONES松村北斗の評価爆騰がり 映画『ファーストキス 1ST KISS』興収14億円予想のヒット