井筒和幸×奥山和由ガチンコ対談 令和の映画に希望はあるか
「女優が乳出して丸裸のすっぽんぽんになりゃいいんだよ」(井筒)
平成が去り「令和」がやってくる。邦画界は、昭和の全盛期に比べれば入場者数こそ減ったものの興行収入は膨らみ続け、「君の名は。」が公開された平成28年には過去最高の2355億円を記録。だが、往年の映画ファンには、キラキラ青春映画やアニメなど商業作品ばかり増えたとの不満は根強い。血湧き肉躍るギラギラした作品はどこに消えたのか、と。そんな中、昭和の時代から圧倒的熱量でアツい作品を届けてきたこの2人――映画監督の井筒和幸氏と映画プロデューサーの奥山和由氏が日刊ゲンダイでガチンコ対談。終わりゆく平成の映画界に何を思い、令和の新時代に何をぶち上げるのか!?
◇ ◇ ◇
――松竹の専務だった奥山さんが突然解任された平成10(1998)年に、おふたりは意外な形で関わりがあったそうですね。
井筒 俺がその“解任事件”を知ったのは「のど自慢」(99年)を撮ってたころ。奥山さんが大手の松竹を離れたなら、これから配給の話なんかもしやすくなるんちゃうかと期待したな。
奥山 実は松竹を追い出されてから製作会社「チームオクヤマ」をつくるってなったとき、井筒さんの「のど自慢」を買いに行ったの。そしたら松竹も来てて取り合いに。遺恨試合になった覚えがありますよ。
井筒 東宝も来てて、結局、話は東宝に行ったんだけど、そんな事情やったらあのとき奥山さんと飲めば良かったな。そしたら独立系でやったほうがおもろいみたいな話になってたかも。
奥山 いずれにしても20年くらい前のあの頃は映画界の変換期というか、新しいものが生まれる期待感があった。それが最近はどれも似たようなキラキラした青春映画ばかり。井筒さんの映画みたいな不良性や生々しい人間くささを拒否してる感じがするね。
井筒 そういう会社の映画というか、スタジオ製作とは全く違うとこで俺なんかは生きてきた。アウトロー的というか、角川だったりシネカノンだったり、ときどきは松竹の軒先三寸を借りて「岸和田少年愚連隊」(96年)を作ったり。そんな流れ者作家としてうごめいてきた。そういう人間がいっぱいいたら、映画界はもっと面白くなる。でも、いなくなった。
奥山 たしかに、映画で飯が食えなくても当たり前、ダメでもともとみたいな熱量の高い人が大勢いた。彼らは生活はまともじゃなかったけど(笑い)、作るものはまともだった。今はその逆。