著者のコラム一覧
本橋信宏作家

1956年、埼玉県所沢市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。私小説的手法による庶民史をライフワークとしている。バブル焼け跡派と自称。執筆はノンフィクション・小説・エッセー・評論まで幅広い。“東京の異界シリーズ”第5弾「高田馬場アンダーグラウンド」(駒草出版)発売中。「全裸監督 村西とおる伝」(新潮文庫)が、山田孝之主演でNetflixから世界190カ国同時配信決定。

村西とおるも野田義治も価値紊乱者ゆえの孤独を抱えていた

公開日: 更新日:

 バブル全盛期の1988年秋。

 高級住宅街、目黒区青葉台の一角に立つ瀟洒な白亜ビルは、夜通し明かりがともっていた。AVの帝王の異名をもつ村西とおる率いるダイヤモンド映像がこのビルの主であり、スタッフの日比野正明、ターザン八木、ジェラルド、クロコダイル山本といった若者たちが社屋に寝泊まりして働いていた。

 村西とおるはこの年の夏までクリスタル映像の社員監督として活躍し、AVの歴史を変えた黒木香主演「SMぽいの好き」をはじめ、過激な作品を撮りつづけていた。

 クリスタル映像社長は、ビニ本時代の同業者だった西村忠治だった。83年、村西とおるは無修正のヌード写真集、通称“裏本”を製造販売して巨万の富を得た。ところが大がかりにやり過ぎて逮捕され、無一文で出所した。このとき知人だった西村忠治がAVメーカーを立ち上げるので社員監督になったのである。村西とおるという監督名も、西村の名前をひっくり返してこれで世の中にとおるか、という村西流の諧謔から生まれたものだった。

 クリスタル映像は、宇宙企画、VIP、サム、KUKI、ジャパンホームビデオといった大手メーカーより出だしが遅れたために、AV女優のキャスティング力が弱かった。有望な女優は、みんな先行のメーカーが握っていたのだ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 2

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 3

    吉川ひなのだけじゃない! カネ、洗脳…芸能界“毒親”伝説

  4. 4

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  5. 5

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    木村拓哉"失言3連発"で「地上波から消滅」危機…スポンサーがヒヤヒヤする危なっかしい言動

  3. 8

    Rソックス3A上沢直之に巨人が食いつく…本人はメジャー挑戦続行を明言せず

  4. 9

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 10

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末