お酒を飲まない人の肝臓病「NASH」には糖尿病薬が有効との報告が
NASHが厄介なのは、確定診断には肝生検が必要な点だ。患者の負担が大きく、NAFLD全員を対象には行えない。
そこで岡上医師が開発したのが、人工知能(AI)を用いたNASHのスクリーニング「NASHスコープ」と線維化診断法「フィブロスコープ」。これが2つ目のトピックスだ。
「通常の検査で分かる11項目をNASHスコープに入れると、1分でNASHかどうかが分かる。それに線維化マーカーを加えた12項目をフィブロスコープにかけると、線維化がどれほど進んでいるかがすぐ判明します」
約3年半かけ、岡上医師がこれまで肝生検で診断したNAFLD324例のデータを用いてAIシステムを構築した。肝生検での組織診断は、病理医の診断能力や、採取した組織の部位の病変で差が出る。吹田病院は国内トップクラスのNASH治療病院ゆえに全国から多数の患者が集まり、肝組織診断を岡上医師がひとりで行うため、肝生検の結果に診断医間の差がない。だからこそ肝生検に少しも劣らない精度の高いAI診断システムが構築できた。
「患者さんの負担が全くない。AIでNASHを調べられるようになれば、今までNASHとされていなかった人にも、NASHが見つかる可能性が高い。早期発見、早期治療となれば、肝硬変、肝臓がんの患者数減少が期待できます」
このAIの検査は、岡上医師の病院以外でも使用可能で、すでに一部の病院で使用されている。