最上悠
著者のコラム一覧
最上悠精神科医、医学博士

うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。

優等生が一転、20年超のひきこもりに…「子ども」の視点

公開日: 更新日:

 前回、不登校ひきこもり、ひいては精神疾患の原因には「感情不全」が潜在し、それが生じる背景には親子間のボタンの掛け違いの影響が極めて大きいというお話をさせていただきました。

 ここで具体例をひとつ挙げてみましょう。

 20年以上ひきこもりの生活が続き40歳を過ぎたばかりの男性Aさんは、お父さまが医師で、親からは跡を継いでほしいと言われ、親族などにも将来が楽しみと期待をかけられていました。子どもの頃から医学部に行く、親の期待に応えたい、医師となって周囲を見返してやりたいといった気持ちが強く、中学までは手のかからない優等生として過ごしてきました。

 高校も名門の進学校に合格はしたものの、同級生も優秀な子たちが集まるその中で、成績は伸び悩み、とてもその期待には応えられないと苦しみ続け、心が折れてしまい、不登校が始まったのでした。

 ある日、どこか体調が悪いのではないかと母親に付き添われ、最初は総合病院の内科を受診したものの、担当医からはどこも体は悪くないと説明された後、「いるんだよねー、体はどこも悪くないし頭もいいのに、君みたいな“もったいない”子が」とあきれ顔で言われたのだそうです。その言葉にAさんは非常に傷つき、診察室を出た後、病院の廊下の椅子に思わずしゃがみ込み、まさに泣き出そうとしたその瞬間、お母さまからは「男のくせに何を泣いているのよ、みっともない!しゃきっとしなさい」と強い口調で叱られたのでした。

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