「人は40%の力しか出していない」米軍特殊部隊“伝説の男”が説く人間のリミッターの外し方
退役海軍特殊部隊員(ネイビーシール)であり、米軍で陸海空の特殊訓練を修了した、たった1人の人物がデイビッド・ゴギンズ氏。講演者としても引っ張りだこで、全米の大企業の社員やプロスポーツチームのメンバー、数十万人の学生に、自らの人生の物語を語っている。
全米で500万部を突破し、世界24カ国で翻訳された本の著者でもある彼は「ほとんどの人は全力の40%しか出さずあきらめてしまう」と言う。邦訳版『CAN'T HURT ME(キャント・ハート・ミー) 削られない心、前進する精神』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。
◇ ◇ ◇
俺はとりつかれやすく、前のめりに突っ走るタイプだ。「やりすぎだ」と叩かれることもある。でも、俺は最近のアメリカ社会にはびこる考え方には、どうしても納得できない。流れに身を任せるだの、タイパだのコスパだのって考え方だ。
手抜きや効率化なんか、クソ食らえだ。
なぜ俺はここまでとりつかれたように自分を追い込み続けるのか? それは、痛みと苦しみを乗り越えて、やれると思っている以上に自分を駆り立ててこそ、肉体的、精神的に大きなことを成し遂げられるからだ。これは耐久レースに限らず、人生全般にあてはまることだ。
君にもあてはまる、と俺は信じている。
人間の体はレーシングカーに似ている。レーシングカーは、外見はまったく違っても、ボンネットの下に高性能のエンジンと、最高速度に制限をかける「リミッター」を必ず持っている。リミッターは、燃料と空気の流れを制御して、必要以上の速度が出ないようにする安全装置なんだ。これは「ハードウェア」の話だ。リミッターは簡単に外せるし、外せば時速200キロだってすぐ超えられる。
人間の仕組みは、もうちょっと複雑だ。
俺たち人間の「リミッター」は、心の奥深くに埋め込まれていて、俺たちの人格そのものと絡まり合っている。リミッターは、俺たちの好き嫌いを知り尽くしている。俺たちの人生の物語や、ものの見方、俺たちが「人からどう見られたいか」といったことを知り抜いている。リミッターは、そういう知識をもとに、俺たちに苦痛や疲労、恐怖や不安を与えて、軌道修正を促してくる、手強い「ソフトウェア」なんだ。
こういった知識を総動員して、「100%の力を出すな」と、俺たちに制限をかけてくる。でも実はリミッターは、俺たちを思いのままに操ることはできない。そこが、エンジンのリミッターと違うところだ。俺たちがリミッターの言うことを真に受けて、「やめる」と宣言しない限り、俺たちを止めることはできないんだ。
残念なことに、ほとんどの人は全力の40%しか出さずにあきらめてしまう。絶対的限界に達したと感じても、まだ60%の余力が残っているのに、だ! 俺たちが「限界だ」と感じるのは、リミッターのせいなんだ!
それさえ知っていれば、痛みに対する耐性を高め、「自分はこういう人間だからできなくても仕方がない」という思い込みを脱して、40%であきらめずに、60%や80%、いやそれ以上の力を出すことができる。
俺はこれを「40%ルール」と呼んでいるよ。この考え方はとても強力なんだ。