西条市立西条図書館(愛媛県)「名水」をアタマとクチで堪能できる開放空間
愛媛県西条市は、「水の都」として知られる。
高知との県境にそびえる西日本最高峰・石鎚山(標高1982メートル)に降り注いだ雨は、長い年月をかけて地下を巡り、市内各地で「うちぬき」と呼ばれる湧水となって湧き出す。地面を掘れば自然に地下水が湧くこの現象は、西条市ならではのものだ。「うちぬき」の水は環境省の「名水百選」にも選ばれている。
市の中心部の湧水地の一つである加茂川観音水から西条藩陣屋跡の堀までの約1.5キロの水路は「アクアトピア」として整備され、かつては工場群の影響で水質汚染が問題になっていたが、官民一体となった取り組みの結果、現在ではホタルが舞う光景も見られるようになった。
そのアクアトピア沿いに位置する西条図書館の外観について、「石鎚連峰をほうふつとさせるよう設計したと聞きます」とは、館長の伊藤昭彦さん。独特の傾斜が付いた高さ約13メートルの三角屋根は、まるで山稜が連なるようにつくられていて、見る者の位置によって山が2つにも3つにも見えてくる。
開館は2009年。04年に旧西条市、旧東予市、旧丹原町、旧小松町が合併し、新たな西条市が誕生したことで、まちづくりの一環として建てられた。
「当館の蔵書は、旧町ごとの歴史や特色を反映しています。例えば、旧西条市長で国鉄総裁を務め、『新幹線の生みの親』と呼ばれた十河信二に関する蔵書を多数所蔵。特に十河信二に関しては、ご遺族から譲り受けた旧国鉄時代の貴重な資料など、おそらくここでしか見られないようなものを保管しています。水に関する書籍は専門のコーナーをつくっていて、これからさらに拡充していくつもりです」(同)
西条図書館は「自動化書庫」を導入。蔵書数40万冊あまりのうち約半分にあたる閉架書庫の本をリクエストする際は、受付スタッフにタイトルを伝えると、機械が本を選び出して持ってきてくれる。職員の手をそれほど煩わせることがないため、気兼ねなく欲しい情報にアクセスできるのもうれしいポイントだ。