母国の援助なし “日本育ち”柔道パキスタン代表の壮絶決意
「まずは一戦一戦、全力で戦うことを意識したい、結果的にメダルが取れれば」――。
柔道男子100キロ級パキスタン代表のシャーフセイン・シャー(23=筑波大出身)が20日、東京・大塚の角海老ボクシングジムで練習を公開。88年ソウル五輪ボクシング・ミドル級銅メダルで現在は同ジムでトレーナーを務める父親のフセイン・シャー(51)とともに約1時間、トレーニングメニューをこなした。
父親がプロとして日本のリングに上がるため2歳で来日。幼稚園に上がると同時に柔道を始め、安田学園高時代には世界ジュニア選手権に出場するなど頭角を現した。筑波大3年時には世界選手権(ロシア・チャビリンスク)の代表にも選ばれている。リオでは開会式の旗手も務める。
今年3月に同大を卒業したが就職先が見つからず、現在はフリーの立場。練習場所の確保すら難しく、これまでは母校や警視庁、角海老ジムなど、場所を替えて稽古やトレーニングを積んできた。
パキスタンでは柔道の第一人者的存在で、五輪出場を果たしながら、政府からの強化費など資金面でのバックアップは一切なし。日本では考えられないことだ。しかも、パキスタンオリンピック委員会が手続きを怠ったため帯同予定だった日本人コーチは現地入りできず、本番は文字通り孤軍奮闘。敬虔なイスラム教徒で、五輪期間と重なるラマダン(断食)時期を1カ月先延ばしして臨むという。
シャーフセインとは対照的に、日本代表は実業団や大学など恵まれた環境で稽古を積んでいる選手ばかり。男女とも全階級で金メダル取りが期待されるが、負けても言い訳できない。