メジャー野球もチクリと イチロー引退会見で露呈した本音

公開日: 更新日:

 85分間に及ぶ引退会見でイチローは、いくつもの興味深いコメントを残した。

 例えば、「ダメだな、これを言うと問題になりそう」と言いつつ口にした、現在のメジャー野球を批判するような以下の発言である。

■「日本は頭を使う面白い野球を」

「本来、野球というのは頭を使わないとできない競技なんです。でも、そうじゃなくなってきている。それが気持ち悪い。日本の野球がアメリカの野球に追従する必要はまったくない。日本は頭を使う面白い野球であってほしいと思います」

 現在のメジャーにはデータ旋風が吹き荒れている。球団が選手の能力や評価を数字に変換し、チームづくりに活用。チームによっては、数学者や物理学者まで雇い入れている。彼らが収集、分析したデータに基づく用兵が首脳陣には求められるようになった。選手は選手で、投手なら軍事用レーダーによって計測された球の回転数や回転軸にまで口出しされ、打者は打ち出し角度やボールに対するバットの入射角を持ち出されて、「本塁打が出る確率が高い」とフライを打つことを推奨される。メジャー日本開幕戦でも見られた極端な守備シフトももちろんデータに基づいたもので、内野の間を抜けるはずの打球がアウトになるケースが飛躍的に増した。

「監督の采配能力や選手の技量より統計学や確率論が重視される。独自に磨き上げた圧倒的な技術でヒットを量産してきたイチローにとって、今のメジャーの野球や、人よりデータが上位に位置する現状は自らを全否定されるようなもの。ひとこと言わずにはいられなかったのだろう」(ア・リーグの国際スカウト)

■「シーズンごと」提案した大谷「新二刀流」プラン実現度

「シーズンごとに投手としてサイ・ヤング賞、打者として本塁打王をとったら……20勝して、次の年に50本塁打してMVPとったら化け物ですよ」

 イチローが提案した隔年で投手と野手を交互に務める大谷の新二刀流プラン。実現すれば、なるほど魅力的ではある。

 投手をしながら野手としても出場する現在のスタンスは倍の労力が必要で消耗も激しい割に、残る記録は中途半端。10勝と20本塁打を同時に達成することに価値はあっても、記録として残る10勝と20本という数字自体はいたって平凡だからだ。1年ごとに投げることで肩肘の消耗は抑えられるから、選手寿命も延びるかもしれない。

 が、実際問題として難しいのではないか。所属球団のエンゼルスにとっては、大谷の記録より何より勝利優先。1シーズンで10勝してなおかつ20本塁打、投げて打って1人2役でフル回転してくれることに、価値があり意味があるからだ。

 まして来季からは二刀流枠ができるから、その分、投手をひとり多くベンチに入れることができるようになる。ただでさえ戦力が不足しているエンゼルスは、大谷を最大限にフル活用しようとするに決まっている。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    岡田阪神は「老将の大暴走」状態…選手フロントが困惑、“公開処刑”にコーチも委縮

  2. 2

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  3. 3

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  4. 4

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  5. 5

    中日・根尾昂に投打で「限界説」…一軍復帰登板の大炎上で突きつけられた厳しい現実

  1. 6

    安倍派裏金幹部6人「10.27総選挙」の明と暗…候補乱立の野党は“再選”を許してしまうのか

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    79年の紅白で「カサブランカ・ダンディ」を歌った数時間後、80年元旦に「TOKIO」を歌った

  4. 9

    阪神岡田監督は連覇達成でも「解任」だった…背景に《阪神電鉄への人事権「大政奉還」》

  5. 10

    《スチュワート・ジュニアの巻》時間と共に解きほぐれた米ドラフト1巡目のプライド