キルギス戦で代表100試合に 主将・吉田麻也が抱く危機感
主将といえども代表での地位は安泰ではない
ただ、本題のサッカーはここからが本番。試合前日会見では、キルギスのクレスティニン監督が「どんなチームにも弱いところがある。そこをうまく使えれば明日はいい試合になる」と発言したように、彼らは虎視眈々と下克上を狙ってくる様子だ。
現に1月の2019年アジア杯(UAE)では中国、韓国と大接戦を演じ、決して弱小国ではない。日本も不用意な戦いをしていたら足元をすくわれかねない。
2014年ブラジル、2018年ロシアと2度のW杯予選を戦い抜いた吉田はその厳しさを痛感している1人。これまでは長谷部誠(フランクフルト)ら年長者に頼ってきたが、主将になった3度目の予選は背負うものがまるで違う。
「僕らは欧州や南米のチームと戦える位置にはいない」とあえて苦言を呈しつつ、妥協することなく、年内最後の節目の公式戦に挑むつもりだ。
DFでは井原正巳(柏コーチ)、中沢佑二(解説者)に続く3人目の100試合達成者となる吉田。
しかし、今季の英プレミアリーグでは予想以上の苦境を強いられている。
10月25日のレスター戦での0-9の歴史的大敗後は3戦出番なし。冬の移籍市場でハーゼンヒュットル監督が大金を投じて世界トップDFの補強に乗り出すとも報道され、自身の行く末に暗雲が立ち込めないとも限らない状況だ。
そもそも欧州では30代選手への風当たりが非常に強く、本田や香川真司(サラゴサ)も新天地探しに長い時間を要した。長友もここ最近はガラタサライからの放出がささやかれている。
厳しい現実を受け、吉田本人も「自分もパフォーマンスが悪ければ外されて契約満了になる。そういう世界にいる危機感はあります」と語気を強めた。
卓越した英語力とインテリジェンスを駆使し、プレミア8年目を迎えた彼の国際経験値は森保ジャパンにとってまだまだ必要だ。
けれども一方で冨安健洋(ボローニャ)ら若いDFが育ちつつあるのも事実。本当に出来が悪ければ、代表での地位を追われる可能性も皆無ではない。
代表100試合という素晴らしい記録を達成しても、このままカタールに辿り着ける保証はない。だからこそ、今回のキルギス戦では「吉田、ここにあり」を今一度示し、その存在価値と必要性を広く知らしめることが肝心なのだ。
「自分はつねに自分史上最高のパフォーマンスを出せるように意識してやってます」
強い向上心を口にする男の見据える先には、2次予選4戦連続完封勝利がある。キルギス戦でそれを果たすことこそが、主将としての責任だ。
2万3000人収容のスタジアムが完全アウェー状態になる中、吉田麻也はいかにして日本代表を統率して勝利へと導くのか。そこに注目しながら、大一番を見てみたい。