タイリーグ2部コーンケン・ユナイテッド 神戸清雄監督インタビュー<上>
単身赴任の苦労ない。タイの水が合っている
日本以外の国でサッカー指導者としてのキャリアを着実に積み重ねていく――。言うは易し、行うは難し。成績不振に陥れば、選手と違ってシーズン中の解任も日常茶飯事だ。そんなシビアな仕事をタイで続け、今年で7年目を迎える。元ジェフ千葉監督の神戸清雄(58)。オファーがないと成立しないサッカー指導者という仕事を間断なく、それも異国でやり続けることの喜び、難しさ、そしてタイサッカーの魅力について現地で聞いた。
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――コーンケン・ユナイテッドの監督に就任した経緯を教えてください。
「2019年シーズン途中でタイリーグ2部(T2)所属のノンブア・ピチャヤFCの監督を退任した後、コーンケン・ユナイテッドが<私に興味を持っている>と聞きました。コーンケン・ユナイテッドは、2019年シーズンのT3(タイリーグ3部)北部地区(ノース)を独走していましたが、第2レグは監督交代などでバタバタしている感じも見受けられました。もし監督のオファーがあれば、すぐに応じられるように心構えはしていました。チームはT3ノース1位として南部地区(サウス)優勝チームとのチャンピオンシップを制し、T3の優勝チームという立場で文句なしにT2への昇格を決めました。それからチームのプレジデントとお会いすることになり、2020年シーズンをT2で戦うに当たり、正式なオファーをいただきました」
――シーズン前のチーム強化は順調でしたか?
「2月16日の開幕戦までの1カ月ちょっとチームを指導しました。ベテランと若手との間に経験値の面でギャップがありましたが、これを埋めていけばチーム力は確実に上がると思いました」
――第1節、2節と連勝を飾った後、3節は引き分け。4節で今季初黒星を喫しました。首位とは勝ち点3差の5位です。
「チームを仕上げていく段階でやりたいサッカーができるようになり、開幕後も手探り状態でしたが、幸先の良いスタートが切れたと思います。余談ですが、実は我がチームは、2017年シーズンにT2に昇格するはずでした。しかし不祥事で活動停止処分を受けてしまい、2018年シーズンはT4(タイリーグ4部)で再スタートを切ることになりました。それだけに昨シーズンのT2昇格は4年越しの悲願だったというわけです。チームのプレジデントは若さと情熱でチームの強化に取り組んでいます。私自身、ファンやサポーターからの大きな熱量を感じているところです」
――どういうスタイルのチームが、神戸監督のやりたいサッカーですか?
「理想としては<攻撃的なチーム>です。しかしながら、守備をおろそかにしては、良いチームを作り上げることは不可能です。いろいろなチームで指揮を執ってきましたが、チームによって所属選手が違いますし、それぞれの選手の特徴や性格なども違います。どの選手をどこに配置して、チーム全体をどんな(選手の)組み合わせにするのがベストなのか、一生懸命に考えています。指導者として、ここに面白味とやり甲斐があります」
■「与えられた選手の強みを最大限に発揮させたい」
――コーンケン・ユナイテッドはどうですか?
「我々の場合、すべてのポジションで理想の選手を獲得できるわけではありません。与えられた選手で各選手の強みを最大限に発揮できるようにしていくのが、監督やコーチの仕事なのです。チームとしての方向性(プレーモデル)、思い描くスタイルに向かってチームの全員が、同じイメージを共有していく。そうしないと強いチームはできない思っています」
――こちらタイでは単身赴任と聞いています。寂しくはありませんか?
「まったく苦労はありません。毎日、楽しく暮らしています。タイの水が合っていると思います」=つづく
(取材・文=絹見誠司/日刊ゲンダイ)
▽かんべ・すがお 1961年8月2日生まれ。静岡県藤枝市出身。静岡高ー早稲田大から本田技研サッカー部。現役引退後はJFA国際貢献事業の一環としてフィリピン、グアム、北マリアナ諸島の代表監督を歴任。国内ではジェフ千葉、名古屋でコーチ。11年には千葉で監督に就任した。13年にタイに渡ってナコーンラチャシーマーFCを皮切りにチェンマイFC、バンコクグラスFC、ウボンUMTユナイテッド、ノンブア・ピチャヤFCで指揮を執り、今季からタイリーグ2部のコーンケン・ユナイテッドでさい配をふるう。