阪神“コロナ合コン”騒動が球団運営に及ぼす未曾有の三重苦

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 阪神のコロナ禍が球団運営に大きな損失をもたらしそうだ。

 藤浪、伊藤隼、長坂の3選手が新型コロナウイルスに感染。5日に伊藤隼が退院したが、3人の感染が判明した3月27日からチーム全体の活動は休止したままだ。

■機能停止状態

 さらに寮生の長坂と濃厚接触していた小幡が先日、PCR検査を受けるなど予断を許さない状況は続いており、二軍施設にある寮に住む選手はそれぞれの部屋で隔離され続けている。事実上、チームは機能停止状態だから、戦力の弱体化は避けられない。

 休む期間が長くなればなるほど、遅れを取り戻すだけでも時間がかかる。すでに開幕は3度も延期され、いつになるか見通しすら立たないが、仮にどこかのタイミングで開幕を迎えたとしても、厳しい戦いを強いられるだろう。

 そうなると、真っ先に悪影響が及ぶのが観客動員数だ。阪神は最下位に終わった2018年、年間の観客動員数は2位だった前年より13万人も減った。まして今年は開幕延期により、試合数の削減や無観客試合での開催も検討されている。阪神OBが言う。

「甲子園の最大収容人数は約4・7万人。箱が大きい分、他球団より売り上げもデカい。1試合あたりの収入は球場内での飲食も含め、最大で3億円程度といわれる。試合数が減り、無観客試合になるだけでも損失は大きいうえに、チームは機能停止状態だから戦力ダウンは避けられない。弱ければ客足も鈍りますからね。そこへもってきて今回のコロナ騒動は、ファンへのイメージダウンを招いた。多くのファンは、球団の選手管理、危機管理能力のなさに対する不信感を募らせているだけに、ファン離れは加速しますよ」

球団イメージの悪化は深刻

■指導者も親御さんも

 コロナ禍はチームのドラフト、補強戦略にも影を落としそうだ。

 感染源となった3月14日の合コンパーティーには、藤浪、高山という将来の投打の軸として期待される選手に加え、二軍の若手や育成選手も参加していた。つまり、プロ野球選手としては半人前の選手たちばかりだ。

 阪神前監督の金本知憲氏は、現役を引退した直後の13年1月、藤浪ら当時の新人選手に講演をしている。「チヤホヤされたり、新聞に毎日出たりする。勘違いが成長を妨げる。グラウンドで結果を出して評価してもらって初めて喜びなさい」などと話したそうだが、今回の合コン騒動は、金本氏が指摘していた「阪神の悪しき伝統」がいまも巣くい続けていることを改めて証明した。

 こうした阪神の実情に、アマ球界の不人気ぶりが輪をかけて加速しているという。東日本の甲子園常連校の監督が言う。

「若い選手が周りにチヤホヤされて、遊びにかまけ、社会常識も欠如している。阪神はもともと育成がうまくいっていない球団ですが、選手が育たないといわれる理由がよくわかります。プロを目指す選手は、育成環境がきちんと整っている球団かどうかを気にします。我々、指導者や親御さんたちも同様です。人間教育を含めた育成プログラムはどうなっているか、とね。今の阪神さんには、それが整っているとは思えない。現行のドラフト制度は行き先を選べませんが、阪神さんには行かせたくない、という声は結構聞きますね」

 FA補強も苦戦を強いられかねない。阪神は年俸などの待遇こそ悪くないが、今回の騒動で図らずも「悪しき体質」が露呈した。合コンに参加していない小幡までPCR検査を受けるなど、多くの選手がコロナ感染の恐怖にさらされている。他球団の選手たちの阪神に対するイメージは悪化しているのが実情だ。

■売り上げは28%減

 球団運営が大打撃を受けかねない中、コロナショックによって生じるであろう親会社の経営損失も看過できない。

 阪神の親会社である阪急阪神ホールディングスは、鉄道を中心に百貨店やタクシー、ホテルなどを運営しているが、電車の乗客や、ホテルやタクシーを利用する人は目に見えて少なくなっている。3月の阪急阪神百貨店の全店の売り上げは、対前年比で28%も減った。

 関西の財界関係者がこう言う。

「阪神タイガースは親会社の広告塔としての位置づけ。6月に予定されている阪急阪神HDの株主総会では、株主から阪神ブランドのイメージダウンを招いたことへの厳しい声が出るのは必至です。そして今は何より、コロナショックによるグループ全体の立て直しが急務。親会社は球団人事に口出ししないといわれているが、経営にはタッチしている。球団単体でマイナスが出ればもちろん、グループ全体の経営状況が球団運営に影響する可能性はある。人件費、補強費にメスが入れば、当然、選手にも大盤振る舞いできない。今年は厳しい冬が待ち受けているのではないか」

 阪神は果たして、この苦境を乗り越えられるのかどうか。

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