日本人初の8mジャンパーは引退後、企業戦士から帰らぬ人に
生前、京都に出向いた私の取材を受けたときは、山田を指導した思い出の知恩院に案内。84段の石段を見上げながら語った。
「山田は私を背負い、何回も何回もこの石段を往復することもあった。南部忠平さんの7メートル98の記録を抜き、8メートルジャンパーになるためにね。達成したとき?そりゃあ、2人して大声で泣いたなあ……」
取材後、朝隈は私に1冊の本を手渡した。山田が32歳の74年に上梓したもので、直筆サイン入りの本のタイトルは「スポーツ馬鹿 地獄へのジャンプ『8m』」(講談社)であった――。
▼やまだ・ひろおみ 1942年、愛媛県生まれ。順天堂大学卒業後に東急電鉄入社。70年に39年ぶりに日本記録を更新し、日本人初の8メートルジャンパーとなる。東京、メキシコ五輪陸上走り幅跳び代表。