球界の「低め信仰」はウソ 藤川のピッチングはそれを証明した
常識は疑ってかかれ、というタイプの私は、30年以上も前から「ストレートは高め、変化球は低め」と選手にアドバイスしてきた。決してあまのじゃくで言っていたわけではない。打者からすれば、低めの球は腕を伸ばしてとらえられるが、高めの、特に内角寄りのストレートは腕をたたんでコンタクトせざるを得ないわけだから、特別な技術が必要になると感覚で分かっていたからだ。
実際、私が最強助っ人と認める横浜時代のロバート・ローズに、「打者にとって最もイヤなボールはなにか?」と聞いたら、間髪入れずに「決まってるじゃないか、High fast ballだ」と言っていた。1987年に近鉄で一緒にやったメジャー通算235本塁打のベン・オグリビーに聞いても、答えはまったく同じだった。
■「真っすぐは高め」
2017年のWBCで投手コーチを務めたとき、巨人の菅野にも「真っすぐはインハイ」とアドバイスをしたし、エンゼルスの大谷にも「投手大谷は高めに真っすぐを投げること。打者大谷は高めの真っすぐには手を出さないこと」と伝えた。
メジャーでノーヒットノーランを2度やった野茂英雄の当時の投球を見返しても、あえて高めに投げているのがよく分かる。藤川も同じだ。先のドラフトで今年も多くのアマチュア選手が指名されたが、間違った常識に惑わされず、藤川球児の投球を改めて見返してもらいたい。