ビーチサッカーW杯 オズ日本が決勝進出!王者をかけ29日深夜にロシア戦の大一番

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 どの競技であっても、決勝トーナメントの準決勝ほど悩ましいものはないだろう。

 勝てば決勝進出が決まって「銀メダル以上」が確定する。負ければ3位決定戦に回ることになって「勝てないとメダル圏外の4位」。

 もちろん世界4位なのだから、誇らしげに胸を張ってもいいのだが、当事者にしてみたら「大会を2連敗で終える」ことになり、後味の悪さだけが残ってしまう……。

 ビーチサッカーの日本代表は、前回2019年パラグアイ大会の準決勝でポルトガルにPK戦の末に敗れ、3位決定戦ではロシアに逆転負けを食らってしまった。

 W杯2回目となるベスト4入りという勲章よりも、メダルに手が届かなったという現実に打ちのめされ、選手もスタッフも全員が呻吟したはず。

 中でもポルトガル戦のPK戦に一番手として登場した茂怜羅オズ・現監督兼選手、3番手の田畑輝樹・現コーチは、一日たりとも「2年後のW杯では絶対にメダルをゲットしてやる!」という思いを忘れたことはないだろう。

 この大黒柱2人は、同じようにゴール右上枠外に外してしまったからだ。 

 ビーチサッカーW杯ロシア大会の準決勝・日本とセネガルの一戦は日本時間8月29日午前1時30分にキックオフされた。

 開始直後にFP大場崇晃がオーバーヘッドでシュートを放つ。オズがセネガルの攻撃のエースFPメンディーとマッチアップしてボールを奪う。 

 他選手の動きもスムーズ。ハードな日程に選手たちは疲労困憊だろうが、ファイティングスピリットは衰えていない。序盤の数プレーで「今日は日本が常に優位を保ちながら試合が進んでいく」ことを予感させた。

 0-0で迎えた第2ピリオドの15分。FP赤熊卓弥が、相手ゴール左で得意のオーバヘッドシュート。その際、ブロックに飛んだ相手選手がチャージのファウルを犯した。

 これで得たPKを赤熊が確実に決め、日本は大一番で待望の先制点を奪った。 

 第3ピリオドの26分。メンディーが日本ゴール正面でボールをキープ。要警戒選手にシュートを打たせまいとオズ、大場、そしてFP松尾那緒弥の3人が取り囲んだ。

 これが裏目となった。  

 右サイドに空いたスペースでフリーの相手選手にボールが渡り、強烈なシュートをゴール左サイドネットに叩き込まれた。

同点弾を浴びた1分後に突き放す

 しかし、同点に追いつかれても浮き足立つことなく、平常心でプレーできるのが、現日本代表のストロングポイントである。

 同点弾を浴びた1分後。 

 FP奥山正憲が、絶妙なポストプレーを見せた。

 右サイドの大場からパスが入る。相手選手2人を背負いながらボールをキープした奥山は、左サイドに走った大場の動きに合わせ、右足で浮き球パス。これを大場がダイレクトで見事なオーバーヘッドシュートを決め、あっと言う間にスコアを2-1とした。

 そのわずか25秒後である。ピッチ中央右サイドから、オズが前方にバックパス。これを受けた奥山は、背後の相手選手と距離があることを機敏に察知し、浮き球を<敢えて高くせずに>打点を低くし、小回りの利いたオーバーヘッドシュート! 

 これがゴール右下隅にズバッと決まった。

 その後もGK河合雄介のロングスローから赤熊がオーバーヘッドで追加点。最終盤にはFP上里琢文のパスを受けた赤熊が右足で押し込み、終わってみれば5-2のスコアで完勝した日本代表が、悲願の決勝初進出を決めた。

「FIFA主催のW杯でフル代表が決勝に進出したのは、2011年ドイツW杯を制した女子代表以来のこと。現ビーチサッカー代表の面々、歴代のスタッフと選手、全国で活動してるビーチサッカーの関係者に『まさに偉業達成。おめでとうございます』と声を掛けたい。それにしてもセネガル戦というのは、今大会で初めて<安心して見ていられた>試合となった。相手選手の強靭なフィジカルに手こずるシーンも少なくなかったが、攻守の切り替えのスムーズさ、組織的な試合運び、オーバーヘッドシュートの確実性など日本代表が確実に上回っている要素が多く、負けを予感させるような時間帯もなかった。W杯ファナリストも十二分に素晴らしいことだが、ぜひ金メダルを獲得して日本のビーチサッカーを盛り上げていただきたい」(元サッカーダイジェスト編集長・六川亨氏)

 試合直後のインタビューでオズは「夢の中にいるみたい」と言って素晴らしい笑顔を見せた。決勝が終わった後も、同じセリフを口にして欲しいものだ。

 難敵ロシアとの注目の決勝戦は、日本時間30日午前1時30分キックオフだ。

ラモスさん! ついにやって来たよ!(オズ)

▽茂怜羅オズのコメント
 前回のW杯、4位に終わって凄く悔しかった。最後まで勝利を信じてプレーしました。(前監督の)ラモスさんにビーチサッカー、ずっと引っ張ってもらった。ラモスさん! ついに(決勝の舞台に)やって来たよ! みんなでメダルのチャンス、絶対になくさないように頑張ろうと話し、チームがひとつになって歴史を作りました。メダル(獲得)は決まりましたが、やはり色はゴールドがいい。ロシアといい試合をやって勝利し、金メダルを日本に持って帰りたいと思います。

▽赤熊琢弥のコメント
 1点目のPKは、試合前の田畑コーチの「前回大会でベスト4の壁を超えられなかった悔しさを晴らしてくれ」という言葉を思い出して強く蹴りました。2点目はコーチの指示通りに動いて、すかさずオーバーヘッドを打った形です。このチームがスタートしてからコロナの影響で海外のチームとの試合の機会がなかったものの、その分コンスタントに代表合宿をさせていただき、選手間のコミュニケーションも取れました。この大会中も良いときも悪いときも選手間でしっかりコミュニケーションを取れる関係にあることが、決勝まで勝ち上がった要因ではないかなと思います。不安だった食事の面も日本食を用意してくれたり、良いコンディションが保てていると思います。世界一のピヴォになるために決勝でたくさん得点をとって得点王になれば、チームの優勝にもつながると思います。しっかり得点王と世界一を狙って頑張ります。

▽奥山正憲のコメント
(得点の場面は)オズ選手から良いパスがきたのであとは思い切り打とうと思い、一番良いところに飛んでいったので本当に良かったです。今大会でここまで来られたのは、田畑コーチが一戦一戦、相手の分析や試合中の戦術面での工夫をしてくれていることが一番の要因かなと思います。スタッフもトレーナーさんが2名体制などケアも十分できているので、コンディションの部分でも選手が心配なくプレーできているのもあります。あとは深夜の遅い時間、日本のみなさんがパワーを送ってくれたのでそれが力になりました。現地の皆さんも応援ありがとうございました。次戦の相手はグループステージで7-1で負けたロシアですが、その負けたときに田畑コーチから「この借りはこのピッチでしか返せないぞ」と言われました。一番良いシチュエーションかなと思います。絶対に勝ってワールドカップを日本に持って帰れるように頑張ります。

▽河合雄介のコメント
 セネガル戦は難しい試合でしたが、失点を最小限に抑えられたこと、点を取る選手がしっかり取ったこと、後ろも守れたことが勝利に繋がったと思います。チームが一丸となって同じ方向を見て戦えました。ビーチサッカーはまだまだマイナーなスポーツなので、自分たちがしっかりと結果を残すことで多くの人の耳にこの情報が届き、少しでもビーチサッカーに興味を持ってもらえたら僕たちも、競技者にとっても嬉しいことです。赤熊選手は得点王、僕はベストゴールキーパー賞を取るという目標を持って今大会に臨んでいます。自分自身のタイトルも見据えながら決勝戦もしっかり勝って、一番良い色のメダルを獲りたいと思います。応援をよろしくお願いいたします。

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