ペナントレース終盤の戦い方 今はアクセルを踏むのはまだ早い
私が中日の二軍投手コーチとして指導者人生をスタートさせたばかりの頃だから、もう50年近く前のことになる。ウエスタンリーグの試合で遠征したある日の夜、大阪球場を訪ねた。ナイターでの一軍戦に備えて練習中だった南海のドン・ブレイザー・ヘッドコーチをつかまえ、いろいろと質問をしたときのことだ。
現役時代に内野の名手として名を馳せたブレイザーは、指導者に転じて「シンキングベースボール」を日本球界に植え付けた。南海の選手兼任監督になったばかりの野村克也さんの右腕として、のちの「ID野球」に影響を与えた人物である。
■目からウロコが落ちた
そのブレイザーに、内野の守備陣形を聞いた。あるケースで内野手は前に守るべきか否か──。
「ゴンドウ、そんなことはどうでもいいことだ。小さなことで、たいしたことじゃない。大事なことは八回、九回のピッチャーの使い方だよ」
シンキングベースボールのパイオニアが即座にこう答えたものだから、目からウロコが落ちた。