同じ薬物問題なのに…米野球殿堂入り ボンズやクレメンスがNGでオルティスがOKのワケ
だが、薬物問題そのものだけが絶対的な当落の基準になっているわけではない。ボンズやクレメンスが資格を喪失した22年の投票ではデービッド・オルティスが選出されている。オルティスは薬物の不正使用に対して強く反対する態度を示していたものの、03年の薬物検査で陽性反応が出ていたことが、09年になって報道されたのである。
ただ、このときは、オルティスが陽性反応が出た事実を認めて謝罪したこと、さらに03年当時は検査体制が完全に確立されておらず、検査そのものの精度も高くなかったことから、選手会も「陽性反応が出たからといって不正薬物を使用しているとは限らない」とオルティスを擁護する態度を示した。
ボンズの場合も、薬物の不正使用が疑われ始めた当時は規制の対象外であった。従って、オルティスが選ばれたのであれば、シーズンと通算での歴代最多本塁打という傑出した成績を残すボンズが選出されてもおかしくはなかった。
それでも、「ビッグ・パピ」と呼ばれて誰からも愛されたオルティスと異なり、報道陣や同僚選手との軋轢が絶えず、自己中心的な性格の持ち主とされたボンズの場合は、疑惑にとどまる不正薬物の問題が得票に大きく影響したのだった。
両者を比べると、BBWAAの有権者と候補者との間の、極めて人間味あふれる一面が明らかとなるのである。