“平成のKOキング”坂本博之さん 児童養護施設の卒園生や少年院出身者を支援しながらジム経営

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坂本博之さん(元東洋太平洋ライト級チャンピオン/52歳)

 1990年代から2000年代前半にかけ“平成のKOキング”の異名を取り、ボクシング界のみならず日本中のスポーツファンを魅了した元プロボクサーの坂本博之さん。今、どうしているのか。

  ◇  ◇  ◇

 坂本さんは現役引退後の2010年、JR山手線の西日暮里駅近くに「SRSボクシングジム」を開業。SRSは全国の児童養護施設の子供たちを支援する自身の活動「Skyhigh RingS」の文字から取ったものだという。

「人々が手を結び合って大きな輪になって、空高く上がっていこうよという願いが込められています。ボクシングのリングではなく人の輪ですね」

 ジムでは児童養護施設の卒園生や少年院出身者も積極的に受け入れ、彼らの自立支援も行っている。期待のA級ボクサー・苗村修悟選手も千葉県の養護施設の卒園生だ。

「皆それぞれ複雑な環境で育ってますから、まずは社会人としての基本から指導しています。時間は守れとかね(笑)。僕もそうでしたが、そもそも一般的なスタートではないわけです。そんな状況の中で、まずは自分がされて嫌だったことはしない人間になろう、行動を起こすことで負の連鎖を断ち切っていこうと」

 自身の15年間のボクシング人生も、まさにそんな思いだったという。

「環境のせいにするのが一番楽なんですけど、その子が理解して自ら変わるまで辛抱強く見守り続けることが大事。愛は“待ち”なんですよね。5年でも10年でも待つ。本当にささいなことでグッと変わったりしますから。僕はよく“一瞬懸命”と言い聞かせるのですが、一瞬一瞬の頑張りがいつか自分自身の進化につながっていくと思うんです」

 幼少期を過ごした和白青松園(福岡県)をはじめ、全国の児童養護施設への訪問を現役時から行っていた坂本さん。そこには当時の苛烈な体験が大きく影響している。

「物心がつく頃には両親が離婚し乳児院に。その後預けられた知人宅では、虐待を受け食事も満足に与えられず、給食が唯一の食事でした。休日には弟と2人でザリガニを捕って食べたことも……」

 極貧生活の中、ついに弟が栄養失調で倒れ、施設に保護される。坂本さんも拒食症と診断された。

「入園後はご飯もしっかり食べられベッドもあって、本当に救われました」

 その頃、施設内のテレビで見たボクシングに一目で心を奪われる。

「お金がないから、まずは朝走ることから始めて。練習生からプロ、日本・東洋太平洋へと絶対に俺が勝つという強い思いで駆け上がりました」

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