大学や社会人は他球団以上に警戒すべき プロは微妙という選手は狙い目
「こら! また、夜中まで酒飲んでたんだろ。おまえの担当地区の学校の試合だろうが……」
甲子園のネット裏のスカウト席で、頬づえつきながら居眠りしてたら、いきなり部長に起こされた。
マウンド上で腕を振っている右腕をチェックしろと言われると思ったので、
「だって部長、あいつ進学ですよ。それも東京六大学に内定してるっていうんだから、手は出せないでしょう」
と答えると、こう言った。
「東京六大学に決まってるんならムリかもしれねえけど、ここは、やっこさん以外にも選手はいるだろう。あのショートは? うかうかしてると彼らも大学や社会人に持っていかれるぞ」
「そう言いますけど、あのショート、足と肩はともかく、打つ方がいくらなんでも非力じゃないですか?」
言い返すと、部長はせきを切ったようにこう続けた。
「おまえさぁ、大学や社会人は最初から、プロは微妙だって連中に目を付けて狙ってるんだぞ。足と肩が合格点で、パワーがないなんて選手は格好の狙い目じゃないか。特に社会人は恵まれたトレーニング施設で、ウエートトレをガンガンやらせるからな。体つきも見違えるようになって、パワーヒッターに変わってるケースもある。例えば……」